お誕生日お題 2013.07.11 Thu 23:53 | 未選択

深夜、明かりもつけず音も立てず部屋の主が寝ている布団に背中合わせになってただもぐった。目を閉じると馴染みの水の音がする。と、そこまで黙って寝ていた男はこちらを向き返って来て「こんな時間にこんな所でどうした」などと無粋な事を言う。「うん。このまま朝までここに隠れて居ようかなって」

「キミとこうしているのなんていつぶりだろうか」
「忙しいのか」
「まあぼちぼちーー」
はぐらかそうとする語尾に細い手が唐突に伸びて来て、唇を指の先で撫でられた。柔らかに。口づけるように。「なかなかお相手出来てなくてごめんよ」途端きゅっと唇を摘ままれる。しかし代わりに柔らかな 本物の口づけがやって来た。甘い…。「あの日僕はキミが泣きじゃくった後のような顔を無防備にして来て、とても自分を抑えるのに苦労したよ」いらへは、「隊首室奥の座敷に一晩篭ったのは誰だ」だった。二人に沈むような沈黙が訪れる。

「うん。いやあ。朝まであと数時間。これからキミを抱いてもいいしこのままこうしていてもいい気がするーー」まだ言い終わらぬうちに手が伸びて来て抱き寄せられたので答えは一つであった。

明け方になって京楽が時間を名残り惜しんでいると「腹が減ったな。ああ！」と言って浮竹がずるずると這ってかしこまって置いてあった四角い箱を引き寄せた。「フォークも何もないけどいいな」と言って、床の上に寝転んだまま箱を開けて、鷲掴みに取り出したショートケーキを差し出して来た。「朝から甘い物はちょっと…ふが」「食べたな、よし。お前が先なのが道理だからな」と言って京楽の口の周りについたクリームをちょんと舐めた。「甘いな」と言う。悪くない。京楽はされるままになって思い出す。さっきの口づけの甘さを…「キミ少し先に摘まんだな？」箱に差し入れた浮竹の次の手が一瞬止まった、がそのままもう一つケーキを取り出してすぐ頬張ると、こちらを向きにっこりと、「たんりょうりおめれとう」と不明瞭にもぐもぐ言った。
「……ありがとう」

明けの鳥が水面を飛び立つ。木々が風に揺れる音。京楽は笑う。そして久方ぶりに自分が心から安らいでいるのを感じた。

@kumononito: 長くなってしまった。次郎総蔵佐の春水さんお誕生日おめでとう！！

ツイッターでお題でした！
糸さんは、「朝の床の上」で登場人物が「泣きじゃくる」、「ケーキ」という単語を使ったお話を考えて下さい。 #rendai http://t.co/oEFwOjQqKb